東京高等裁判所 昭和37年(う)2301号 判決
被告人 高田敏
〔抄 録〕
犯罪の日時は、罪となるべき事実そのものではないとしても、罪となるべき事実の同一性、法令の適用及び公訴の時効等のことを決定するのに欠くことのできない要素であるから、証拠によつてこれを推認することができる場合であつても、それのみでは足らず、なんらかの形において前記諸事項を決定するのに足りる程度に判文中に判示することが必要であり、これを欠くことは判決の理由として欠けるところのあるものというべきである。これを原判決についてみるに、原判決は、その罪となるべき事実の前段において「被告人両名は――昭和三十二年十二月下旬頃より――睦会いう会名にて社交クラブを経営し――」と判示しているから、長谷川うた子ほか五名の婦女を自己の占有する場所に居住させこれに売春をさせることを業としたのは昭和三十二年十二月下旬頃以降であることは示されているとしなければならないが、右以降の何時から何時までの犯行であるかの示されていないことは所論のとおりである。本件のように営業犯と称せられるものについては、犯行の内容の一々をたとえば別紙一覧表によつて明示することは必ずしも必要ではないとしても、少くともその始期と終期とが明示されるのでなければ、前記のような必要事項を決定することはできないのであり、特に、本件の場合売春防止法は昭和三十一年法律第百十八号をもつて公布せられたものではあるが、第二章刑事処分に関する各条が施行せられたのは昭和三十三年四月一日からであつて、犯行の始期が昭和三十二年十二月下旬頃以降の何時からであるかが確定判示されなければ、同法第十二条を適用して有罪とすべき場合であるか否かを決定できない関係にあるから尚更である。原判決は、少くとも、犯行の日時の判示を欠ぐ点において理由を附しない違法があるものといわなければならない。それ故右の点に関する論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。
よつて、その余の論旨(量刑不当)に対する判断はこれを省略し、刑事訴訟法第三百九十七条第一項、第三百七十八条第四号により原判決を破棄し、同法第四百条但書により当裁判所において更に判決する。
(罪となるべき事実)
当裁判所の認定した罪となるべき事実は、原判決の罪となるべき事実のうち、「被告人両名は、夫婦であり、」となるのを「被告人は、妻昌子と共に」、「被告人両名は共謀の上、」とあるのを「被告人及び昌子は共謀の上、」と各変更し、右「共謀の上、」の次に「昭和三十四年六月下旬頃より昭和三十五年初頃までの間、」と挿入するほか、原判決の罪となるべき事実のとおりであるから、ここにこれを引用する。
(久永 上野 三橋)